バグダッドカフェとメールの話

この前「次回は腹筋の話」と書いたけれど、腹筋の話より今はただ淡々と毎日の話がしたくて、早く腹筋の話を片付けてしまおうとするもなかなか書けないので日々の話ができず苦しい、という変な状況になった。

私は何をやっているんだ。

いいや、ゴールドジムの話はまた今度。
それより自分を救おう。


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週末、映画「バグダッドカフェ」を観に行った。
家から5分のシネコンで、午前10時から昔の名画を上映する企画をやっている。
上映される映画は、だいたい1~2週間ごとに入れ替わる。
私は「バグダッドカフェ」がどうしても観たくて、半年以上前から上映を待っていた。

主題歌の「Calling you」はあまりに有名で、大好きな曲だ。でも映画自体を見たことはなかった。
私は普段あまり映画を観ない。嫌いなのではなく、あまり観ない。音楽も本も。
よくないと思いながら、なんとなくそうやって生きてきてしまって。

ただ、この映画は曲が呼んでいる気がして、どうしても観ておきたくて楽しみにしていた。
映画がもし肌に合わなくても、曲が好きなことに変わりはないのでいい、と思った。
ネットのレビューも読まずに、どんな映画か知らないまま観に行った。

キャラメルポップコーンとホットコーヒーを買って席についたら、隣は星野源みたいな、いかにも映画好きそうな若い男の子で、あまり混んでいない映画館でなぜか隣り合ってカップルのようになってしまった。ぜんぜん他人だけど。
休日の朝10時から、知らない男の子と並んで映画を観る、という非日常な感じは悪くなかった。

映画は、私が生まれてから今日まで観た中でいちばんいい映画だった気がする。
不器用な女性たちの不器用なさびしさが、ちゃんと幸せに“返って”いく映画で。
(『変わって』『戻って』『帰って』など考えたけど、『返って』のような気がした)

幸せになりたい。なれるかな。なりたい。

隣の星野源ボーイには、伝わっただろうか。あの不器用な大人の女性たちのさびしさ。やさしさ。幸せ。


恋人に「すごくいい映画だった」と伝えた。「いい映画だったんだね」と返事がきた。
それだけで終わりにすればよかったのに、映画の中の彼女たちより破滅的に不器用なことを言ってしまった。

暗がりを恐れる子どものような私に、忙しくてやさしい彼はきっと困っている。
「彼」は「私」じゃないのに、どうしてわかってほしい、わかりたい、なんて思うんだろう。
嫌われてしまったかもしれない。
この世の終わりみたいな気持ち。
ブレンダが店の外に置いた埃っぽいソファに座り込んで無表情で涙を流していたシーンを思い出す。





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前回、「もしこのブログを読んでいる人がいるなら関わりたい」と書いたところ、思った以上にメールやメッセージをいただいた。
「読んでますよ!」とさわやかなひと言メールをくれた方、ご自分の出来事を丁寧に書いてきてくださった方もいた。

誰もいないと思っていたら、じつは人がいた。
見えなかったものが見えるようになった気がした。
見えないままじゃなくてよかった。

おひとりおひとりに心を込めて返事を書いた。
こういうことがしたかったんだ。
私は誰かの話を聞きたくて、誰かに話を聞いてほしい。

音のない世界で叫んでいると狂ってしまいそうで怖い。
私は弱いし、私は凶暴だ。
弱さや凶暴さを持って人と関わることは、正直怖い。
答えは出ない。けれど、弱さや凶暴さの手綱を引きながら人と関わることを選んでいる。
情けないほど人が好きで。


メール以外でも、とてもうれしいことがあった。
Twitterで、ラッパーのMCビル風さんが私の詩集を購入して読んでくださっていることを知った。
Twitterは眺めるだけにしているけれど、そんなルールは一瞬で忘れてリプライをし、初めてご挨拶をしてお礼を言った。

じつは私が前回書いた「気になって読んでいるブログ」はビル風さんのブログだった。
ビル風さんの言葉は常にとても真摯で、刺さる。

去年の春、桜がちょうど満開の頃、「仕事の後に花見をしながら散歩したい」と言ったら、「行きましょう」と友人のYZさんが賛同してくれて、コンビニでお酒を買って飲みながら歩いた。
雨まじりだったけれど、桜はめちゃくちゃきれいだった。
私もYZさんもすごくたくさん歩く人なので、なんだかんだ話しながら新宿から神保町まで歩いた。
何の競技だ、という距離だけれど、歩きながら哲学的な話ができて私は楽しかった。
そのとき初台のミニストップの前で、買った缶ビールを開けながら「ビル風さんってどんな人ですか」と、ビル風さんを知るYZさんに聞いたりしていた。

詩集の感想を「血を流して生み出された表現は真っ直ぐに伝わります」と言ってもらった。
私はビル風さんの表現に対して、同じように感じている。
いつか詩集をお渡ししたい、と思っていたので、まさか発売時に買ってくださっていたなんて「こんな素敵なことがあるんだな」と、ありがたい気持ちになった。


書くことの意味を失いかけていたけれど、書いていたらこういうこともあるんだ。
書かないと、こういうことはないんだな。


2018年02月06日(火) 13時15分