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赤いサンダルと檸檬

赤いサンダルを買った。

服装を選ぶとき、いつもバッグや靴の色は無難に服に合わせる。
柄のスカートをはく日には、柄の中から一色取ってきて、靴とバッグの色を決める、とか。
黒とベージュと茶色、それに白あたりを持っていれば迷うことはあまりない。
あとはコーデのバランスを見ながら、大きいバッグにしたり、丸いバッグにしたり、スニーカーにしたり、パンプスにしたり。


そういう私が突然、赤いサンダルを買った。

きっかけはたぶん、街で見た女の子。
すごく尖ったおしゃれさんという感じではなく、普通の女の子だった。
シンプルな服に赤いサンダルを履いて信号待ちをしていた。

そのサンダル姿を「かわいいな」と思ったけれど、なぜ惹かれたかといえば違和感があったからだ。
信号待ちをしている女の子の赤いサンダルは、炎天下に異様に浮きあがって見えた。
コーデの一部というより、“彼女と靴”。
靴に人格があるかのように見えた。

それで、「いいな」と思った。


こうして買った赤いサンダルは、容赦なく赤かった。
子どものおもちゃのような赤だ。目がちかちかする。

私が持っている服のどんな柄にもこんな鮮やかな赤はないし、どんな服にも合いそうにない色をしている。
手ごわそうでニヤニヤした。


たとえば、白いTシャツに、カーキのベイカーパンツ。
夏だから、バッグはかごバッグ。

いつもなら黒いパンプスかベージュのサンダル。
もしくは白いスニーカーか、シルバーのオックスフォードシューズ。


じゃなくて、赤いサンダル。


「これだ、これ」

サンダルは強烈に主張していて、まったくなじむ気がない。
調和を無視している。足だけが目立つ。

でも、なんかいい。

私はたぶん、自分のバランス感覚に飽き飽きしていた。
その無難さを、木っ端微塵にふっ飛ばすのが赤いサンダルだった。


今朝、駅までの道でマンションのドアやお店のウインドーに映る自分とサンダルを眺めた。
赤いサンダルは、ものすごく偉そうな顔をしている。
ダサいんだかおしゃれなんだか、よくわからない。
それがすごくおもしろい。

くすぐったいような清々しいような気持で歩きながら、梶井基次郎の「檸檬」を思い出していた。

私の赤いサンダルは、丸善に積み上げた画集の上に置かれた檸檬のようなものかもしれない。


参考:「檸檬」梶井基次郎(青空文庫)
https://www.aozora.gr.jp/cards/000074/files/424_19826.html

2018年07月25日(水) 19時53分